金の卵
両親は共働きで子供の頃からひとつ上の兄貴といつも一緒に居させられた、僕は兄貴の奴隷だったので何か兄貴の癪に触ると殴られた、人前だろうとぶん殴られた、そのおかげでいまだに後頭部の左側は隆起していて仕事でヘルメットをかぶるとだんだんヘルメットが斜めを向いてくる
何をするにも兄貴の言いなりで自分の感情を外に出せず小学校も中学校も友達があまりいなかった
中学3年の時に兄貴が高校の寮に入ることになった
高校1年の時に兄貴が寮で同級生の財布から金を盗んでいたという話を聞いたが特に何も思わなかった
そのまま21才くらいまで何も考えずに生きて昔を振り返っても楽しかったことや思い出とかがゴッソリと何も無い 自分は何にも興味が無いし好きなものも特に無い もしかしたら人を殺しても何も感じないんじゃないか、と思った
生まれ育った地元も昨日引越してきた人みたいな違和感、星新一の「地球から来た男」のような気分で毎日を過ごしていて嫌だったのでなんとなく東京に移住した
東京に引っ越してよかったなと24歳で思った。